2018年9月11日(火)の講座
テーマ:がん治療と漢方の関わり
講 師:健康漢方研究所 管理薬剤師 義江則子さん
私たちの健康に役立つ漢方について学ぶ人気の講座シリーズ。今回は、日本人の2人に1人が罹患するといわれるがんの治療と、漢方の関わりについて、健康漢方研究所管理薬剤師の義江則子さんが教えてくださいました。
いま、がんの治療現場で漢方が注目を集めているといいます。しかし、治療薬や特効薬として漢方が用いられるわけではないとのこと。
「がん治療は、西洋医学を用いるのが一般的です。しかし、痛みの軽減を目的に使われるモルヒネ(麻薬)や、放射線、抗がん剤などといった治療法は、どうしても副作用があり、それが患者さんの生活の質(=QOL)を下げる原因になっています。そこで、副作用を軽減してQOLの向上をはかろうと用いられているのが、漢方なんです」と義江さん。例えば、体調を整えたり免疫力を高める働きのある漢方は、手術前後のサポート療法の補剤として用いられるといいます。
がんの治療は血液の流れがとても大事。抗がん剤の成分を細胞一つ一つまでしっかり届けたり、術後の浮腫や冷えを軽減するため、血の巡りをよくするとされる桂枝茯苓丸や柴苓湯が用いられているといいます。この2つは、女性向けの漢方としてもよく知られていますよね。
西洋医薬の代替としてではなく、患者のメリットにつながる治療として用いられている漢方。「西洋医薬は、たいてい1つの症状に対して1つの薬が処方されます。つまり、複数の症状が出ると薬の数もどんどん増え、ポリファーマシー(薬漬け)の状態になってしまいます。しかし漢方薬は、さまざまな組み合わせでさまざまな症状に幅広く対応できるため、薬の数を減らすことができるんです」。
人によって合う合わないがあったり、年齢や症状によって用いる漢方が違ったり、保険適用外という場合もありますが、今後はますますがん治療に漢方が取り入れられるだろうとのこと。「漢方は、病気の治療だけでなく、日ごろの健康や生活全般のサポートにも用いられます。何となく不調というときに、上手に漢方を取り入れてみて」と義江さん。
受講生からは、自分が気になる症状にはどういった漢方がいいのか、効果的な飲み方は?など質問が多く寄せられ、関心の高さが伺えました。