2019年12月4日(水)の講座
テーマ:ウマヘタ手書き年賀状講座
講 師:書家 大塚耕志郎さん
12月に入り、そろそろ新年の挨拶の準備が頭をよぎるころ。最近はメールやSNSなどで手軽に済ませてしまう人も増え、年賀状を書くことにハードルの高さを感じる人もいるかもしれませんね。しかし、年の初めに懐かしい人から手書きの年賀状をもらうのは、誰もがうれしく感じるもの。講座では、手軽に遊び感覚でありながら、相手の印象に残る素敵な年賀状の作り方について、書家の大塚耕志郎さんが教えてくれました。
まずは年賀状に欠かせない、干支の話。干支は中国が起源で、すでに3,500年前には存在していたとか。最初は数で12に分けていたところに、植物の芽吹きから終わりまでの生活環を当てはめ、後からそこに動物を当てはめたのだとか。この12という数は干支はもちろん、1年の周期、1日の周期、方角など、あらゆるものと関係していることは、みんなが知るところです。「干支は日本、東南アジア、ロシアなどにもあります。国によって多少干支の動物は違っていますが、中国に隣接した国に干支が広まっていったようです」。
話をしながら、手元はずっと文字を書いている大塚さん。書道というと、正しくキレイに字を書かなければならないと、つい身構えてしまいますが、「実は漢字は×と+の組み合わせでできているので、線を書いていると思えば筆文字は怖くないですよ」。
例えば「壽」という字も、横線を計10本、次に縦線を6本、線を引くだけで完成。最初、何を書いているかわかりませんでしたが、最後に「壽」という字に仕上がり、受講生からは歓声が!書き順を無視した書き方ですが、お絵かき感覚でただ線を引くだけで、なんとも味のある筆文字ができあがりました。「線を積み木だと考えると、筆文字も楽しくラクに書けますし、むしろ普通に書くよりも面白い字が書けるんです」。
先生の手本を参考に、受講生のみなさんも思い思いに字を書いてみます。自分の名前、「寿」や「謹賀新年」など賀状によく使う言葉など、書き順を気にせず、横、横、縦、縦の繰り返しで筆を動かします。
「上部を大きめに書くと、赤ちゃんのような『頭でっかち』の可愛らしい雰囲気に。逆に下部を大きめに書くと、『小顔足長』の美人な雰囲気の字になりますよ」とバランスの取り方も教えてもらいました。
さらに、3cm角程度の大きさに切った段ボールチップを使って、同様に線だけで文字を仕上げる方法も紹介。これなら子どもでも簡単に楽しく書けそう!
「達筆もすばらしいですが、字のうまさを自慢されるよりも、こんなウマヘタな字の賀状をもらったほうが、なんとなくほっこりしませんか」と大塚さん。上手なばかりがいいわけじゃない、いかに心を伝えるかが大事、ということですね。
「墨汁のにおいを嫌いな日本人はいないが、書道を嫌いな人は多い。それは、子どもの頃から正しい字の書き方ばかりを教えて、少しでも悪いところがあると『バッテン』をもらうから」と大塚さん。たしかに、今回の講座のように字を書く楽しさを最初に経験すれば、書道にマイナスイメージをもたなかったかもしれません。書の楽しさを体験できた1時間でした。
(写真:左から)トメ・ハネを意識した一般的な書道で書く文字、筆を寝かせたり手を力を抜いて書いたウマヘタ字、段ボールチップで書いた字