2017年7月26日(木)の講座
テーマ:消費者とトリセツ
講 師:NPO法人日本テクニカルデザイナーズ協会常任理事 山岸義彦さん
商品を購入すると必ずついてくる、トリセツ(=取扱説明書)。大事なことが書いてあることはわかっていても、きちんと読む人は意外と少ないのではないでしょうか。
今日の講座では、そもそもトリセツとは何か、なぜ読まなければならないのか、賢い消費者になるためのヒントを、NPO法人日本テクニカルデザイナーズ協会常任理事の山岸義彦さんにお話しいただきました。
現在、製品には「品質表示」や「取扱説明」を必ず明記しなければならず、箱や袋に書き切れない場合は別紙で添付することになっているそう。しかし現状、表示の仕方について決まりがあるわけではなく、メーカー各社がそれぞれ工夫して作っているのだとか。つまり、表示の仕方がメーカーごとに異なりバラバラなのだそうです。
仕事柄、さまざまな製品のトリセツを収集している山岸さん。自身のトリセツコレクションの中から何点かを例題として見せてくれました。
トリセツにはたいてい「よく読んでから製品を使用してください」「本書を大切に保管してください」などと書いてありますが、実際にトリセツを見た受講生からは「小さい字がいっぱい書いてあって読む気になれない」「文字の色が見にくい」「保管しにくい」などの声が。
本来消費者にじっくり読ませなければならないはずなのに、出回っているトリセツは読む気が失せたり読んでも理解できないものがほとんど。そんなトリセツの現状に山岸さんは疑問を呈します。
トリセツには、注意事項だけでなく、使い方や手入れ方法、廃棄方法などが書かれています。それを読まずに製品を使うと、自己流で使用したり間違った使い方をしてしまい、本来の製品性能が発揮できなかったり、すぐに破損してしまったり、ケガや事故につながる可能性も。さらに、損害賠償を恐れるメーカー側がトリセツに禁止事項ばかり記載し、肝心の「正しい使い方」の説明がおざなりになっていることも多いとか。
「事業者には、製品の情報を消費者にわかりやすく説明する『責務』がある」と山岸さん。山岸さんはいま、読みやすく理解しやすいトリセツとは何かを研究し、提唱・普及する活動に取り組んでいるといいます。「丁寧にモノを作り、丁寧に使い方を説明し、消費者に丁寧に使ってもらう。トリセツは、ものづくり大国・日本のすばらしい文化なんです」。
テレビのニュースや新聞でしょっちゅう見かける製品事故も、トリセツをきちんと読んでいれば防げたかもしれないものも。賢い消費者であるために、そしてせっかく購入した製品を誤使用でムダにしないためにも、これまで気にも留めなかったトリセツをもう一度読み直してみようと思いました。