2017年11月1日(水)の講座
テーマ:製品を買うと付いてくるトリセツ、つくり手、つなぎ手、つかい手、三者が得するトリセツとは
講 師:NPO法人日本テクニカルデザイナーズ協会 常任理事 山岸義彦さん
モノの組み立て方や使い方の手引き書である取扱説明書。でも、いざ必要になったときにどこに保管していたかわからなくなって困った、ということもあるのでは。今日の講座では、そもそもトリセツとはどういうものなのか、その問題点や、製品を安全に使い損をしないためにどうすればいいかなどについて、NPO法人日本テクニカルデザイナーズ協会常任理事の山岸義彦さんにお話しいただきました。
仕事柄、いろいろな製品のトリセツを収集しているという山岸さん。その一部を見せてくれました。大きさも、色も、形も、さまざま。イラスト入りで丁寧に説明してあるもの、イラストも何もなく細かい字が羅列されたもの、製品の包装(ビニール袋)に印刷されたものも。「トリセツは、製品には必ずと言っていいほど付いてきます。しかし、法的には特に規制はなく、実は必ず付けなければならないものでもないんです。法的に義務づけられているのは、『本体表示(製品本体に表示しなければならない注意事項など)』であり、本体に書き切れない場合は取扱説明書を添付するのが望ましいとなっています。つまり、あくまで事業者(メーカー)が任意でトリセツを付けているというのが現状なんです」。何の規制もないから、大きさも形も仕様も内容もみんなバラバラということなのだそうです。
しかし、私たち消費者の立場からすれば、色も大きさもバラバラなトリセツはあまり好ましくはありません。実際、トリセツの保管に困っている方がほとんどではないでしょうか。また、読んでもよくわからない、肝心なことがどこに書いてあるかわからない、ということも多いと思います。取説を読むのがめんどくさくて適当に操作してしまうと、壊れてしまったりケガする恐れも。本来トリセツとは、正しい使い方で製品を安全に使ってもらうための説明書でなければならないはずです。「消費者(使用者)にトリセツを読んでもらうためには、トリセツの仕様を画一化すべき」と山岸さん。山岸さんが常任理事を務めるNPO法人では、取扱説明書のガイドラインを作成し、広く提案する活動を行っているそうです。
通常、トリセツに書いていない誤った使い方をして製品が壊れたら、誤った使い方をした使用者が悪いと思うものです。しかし、消費者基本法や製造物責任法では、実はトリセツに不備(読みにくい、わかりにくい等も含む)があれば事業者(メーカー)の責任としています。このことを知らない人は意外と多いのではないでしょうか。どんなに気をつけていても、正しい使い方をしても、製品の事故は起こりえます。「トリセツはよく読むこと、できれば商品購入前にトリセツを読むのが望ましい」と山岸さん。賢い消費者になるために、そして損をしないためにも、私たちはトリセツについてもっと関心を持つべきなのかもしれませんね。